大隅半島 オノガラ岳 牛牧川御岳沢左股遡行 メンバー 松本俊介(鹿児島大学山岳部桜岳会)、渡辺剛士(鹿児島大学山岳部5年)、竹之内真人(同4)、黒岩聖也(同1) 山域 大隅半島・垂水市−鹿屋市境界・高隈山地東面・牛牧川(オノガラ川) 地形図 二万五千分の一『上祓川』 牛牧川は、二万五千分の一『上祓川』の『オノガラ川』の地元名であるらしい。(『オノガラ』を本当は漢字で書きたいが変換できない。『オ』は『大』、『ノ』は『昆』にたけかんむりで『菌』と同じ意味で、ここでは藪とか笹とかの意味、『ガラ』は『柄』)くわしくは『鹿児島の山歩き』(吉川満著、葦書房)に載っているが、地形図で『オノガラ川』とかいてあるいわゆる高隈渓谷は牛牧川左股のことだそうだ。右股はオノガラ岳北東に突き上げていてこれを『オノガラ沢』と呼び、左股の方は『御岳沢』と呼ぶらしい。御岳沢は上流でさらに二股に分かれており右股はオノガラ岳南東斜面に、左股は御岳と妻岳のコルに突き上げている。流域面積は左股の方が圧倒的だ。遡行を林道で打ち切るなら、遡行距離の点から左股の方がよいと思う。 (沢名考証に関しては出典が『鹿児島の山歩き』一冊に頼っているため確証は持てない) 2003年9月7日 9:20入渓 12:10二股 15:10旧取水口 15:45林道 17:30ごろ駐車場 高隈渓谷駐車場に車を止め、沢装備に身を包み御岳沢右岸の遊歩道を歩く。しばらく行くと崩壊しているのでそこから藪を下り入渓。早くもゴルジュってくるが浅く緑が多いため圧迫感は全くない。小滝を松本OB必殺の泳ぎで次々と突破する。右岸から支流が『おしの滝』を架けて落ち込み、沢は右に屈曲するが、本流にかかる滝二つはどうにもならないので少し戻って左岸から巻き、二つ目の滝の肩に出る。基本的に遡行者が多いためか巻き道がついており、弱点と思われる所には巻き道がついていることが多かった。以降泳ぎの得意な松本OBの独壇場。4〜5mの滝なら次々泳ぎで滝に張り付き、シャワークライムで登っていく。樋状の流れをテクテク進む。左岸から支流がすごい滝を架けて落ち込んでいる。その後の小滝も松本OBが(以下略)。現役も松本OBに倣い盛んに突破を行う。竹之内は突破系としての素質が開花しつつあるようだ。しかし、久々の沢でやる気満々の松本OBが『気がつけばトップ』という感じでやる気の違いを見せつけた。沈みかけた倒木を橋にして滝に取り付いたり、多様なバリエーションで攻める。でかい滝を右から巻くと二股だった。一同、『あれ、進みすぎてねえ?』と首をかしげるが、時間的にはおかしくなく、読図が間違っていたのだろうということにする。左股に進路を取り、遡行記録に逆らって左岸から行くが、CS滝はどうにも処理出来ず巻く(どっちから巻いたか忘れた)。 だんだん日本庭園的な様相を呈してくる中、突如人工の滝が現れる。ここも松本OBがとっとと正面攻撃で突破。このあたりになってくると、いい加減からだが冷えてきた渡辺と黒岩は絶妙の(?)へつりで体温維持をはかり出す。人工の滝は昔の取水口のようで、右側の遺構物にレリーフと刻まれた文字がある。良く読めないが、牧ノ原に灌漑用水を行っていたようだ。こんな山奥でよく作ったなあと感心する。人工滝を越え小滝を幾つか越えると林道に出る。ここで遡行を打ち切る。 林道だりぃなと思っていたら軽トラックが下ってきて、『おい、ヒッチだ!』とお互い小突き合うが、結局誰も声を掛けれぬままトラックは下っていった。死ぬほど長い林道でそのことを強く後悔した。対岸の尾根は最近林道が出来たらしく、バリカンで刈られたように無惨だ。林道を歩きながら何度も支沢を横切る。御岳沢に落ち込んでいく支流の中には立派な物が何本もあり、中には垂直に近く高さも30mはあろうかという滝を林道のうしろから下に架けているものもあり、林道がなければ十分ルンゼ登攀の対象になるだろうと思った。さすがに鹿児島市内から出てきて後に林道を見ながら薄暗いルンゼでハアハア言いたくない。 林道の途中で高隈渓谷駐車場へのショートカット歩道があり高速で下る。松本OBの家でメシをごちそうになったあと垂水港まで送って頂く。 なお、遡行図は『九州の沢と源流改訂版』(吉川満著、葦書房)を用いた。この本では、御岳沢は『オノガラ川本流』として紹介されている。 (文:渡辺) |